学校で子どもたちの前で20分間、テーマは自由にお話をする機会があるのですが、今回は3.4年生向けにお話しした内容から。
学生時代から社会人の数年間の経験から、私の考える指揮者像をまとめていきます。
※合唱指揮しか経験がないので、ここでの指揮は合唱をベースに進みます。
経歴
初めてステージ(本番)で指揮を振ったのはおそらく高2の冬。
小3から所属していた合唱団のクリスマスコンサートで、最高学年である高2のメンバーで曲決め、練習、本番の指揮までするステージ(通称ポピュラー)がありました。
おそらくそこで指揮を振った。はず。
指揮者をしたいと思ったのは、おそらく親の影響。
大学から合唱を初めた父が学生指揮者をやりたかったが、なれなかったという話を聞いたのがきっかけだったと思う。自分はやってみたいと。
そんなこともあり、中学から関西学院へ。
中学からもちろんグリークラブに所属。中学では学生指揮者はなく、部長を務める。
高校(3年)では念願の学生指揮者。
大学(4回生)でも学生指揮者を務める。
大学卒業後は、父が立ち上げから関わっていた宝塚ゾリステンという合唱団へ。
そこの指揮者であり、私の師匠でもある関学グリーの大先輩に声をかけていただき、はじめは助っ人として演奏会に参加。
父がその頃に亡くなったこともあり、弔いも兼ねて参加していたが、
後に副指揮者をしてみないかと声をかけていただき、副指揮者に就任。
助っ人時代含み、計4年間関わる。
あと、最近では職場で指揮をさせていただくことも少し。
指揮者って何するの?
指揮者の仕事を大きく3つに分けてみました!
指揮を振る
まずはこれ。指揮者ゆえに。
でも実は、この指揮を振るのは3つの中で1番重要ではなかったり、1番重要だったりと、一概には言えないところがあります。
※ここでいう[指揮を振る]は、演奏会等の本番のステージでお客様を前にして指揮者として演奏を届けること。
重要ではない?
後の2つにも関わってきますが、指揮者が演奏で、また歌い手に伝えたいことは練習でほとんど伝わっています。
そして、大半が一定の速度で進む曲に関しては、初めと終わりだけ合図を出せば、曲中は何もしなくても演奏はすすんでいきます。
伴奏がある曲はさらにするべきことがなくなります。(そのため小学校の音楽専科時代は、指揮よりも伴奏に注力していました。)
そういう意味では、指揮者が演奏中に振らなくなっても演奏はある程度いい具合に進んでいくのです。
それでも指揮者は重要!
ではなぜ指揮者が必要なのか。
それは、練習でしてきたことを歌い手が最大限引き出せるようにするためだと考えます。
色々ありますが…
1番シンプルなことでいうと、呼吸を揃えること。
歌声が揃わない原因に、声を出す前の息を入れるタイミング(ブレス)が揃わないことが考えられます。
そこを「さん はい!」のタイミングで指揮を振り、できれば歌い手と一緒に息を入れることで、歌声の第一声を抜群に揃えることができます。
他には練習でポイントとなった部分の時にアイコンタクトや合図を出して再現したり、音楽や感情を表現したり…(時にはパフォーマンスしたり。笑)
指揮者が変わると演奏も変わります。それは良くも悪くも。
指揮者の重要性は、どんな人がするのかによっても変化すると言えます。
練習をする
ここからが表には見えない、指揮者の大事な仕事。
本番で演奏するためには、当たり前ですが練習が必要です。
その練習を進めているのが指揮者です。
そして練習の前に、指揮者は楽譜を見て、どう解釈して、どう表現するのかを考えます。
そして、それを練習で言葉や指揮を巧みに使って演奏者に伝えます。
(ここは詳しくするとキリがないのでこの辺で。)
あと曲の練習ももちろんですが、発声練習もします。
腹式呼吸のような技術的なことから、表現的なところまで。
そういう意味では、指揮者は模範となるように歌える必要もあるのです。
計画を立てる
あれもこれもと、表現したいことは次から次へと沸いてきますが、時間は限られています。
逆に、一部分にこだわりすぎて本番まで時間がない!なんてことになると、イライラ⇄イライラの負の連鎖が起きます。
ここで大事なのが時間管理、タイムキーパー的な役割。
本番までの練習計画はもちろんのこと、演奏会の曲目、構成も。
練習する相手、演奏する相手によって、計画を立てることがまず第一になってきます。
そう言う意味では1番重要かも。
何事も準備段階が大事!
指揮者のここが面白い!
指揮をしていると、子どもたちから
「指揮をして楽しかったですか?」
とよく聞かれます。
答えは、「めちゃくちゃ楽しいよ!」
ここからは指揮者に関する面白い豆知識をクイズ形式でお届けします。(全3問)
〇〇を出さない音楽家
第1問『指揮者は唯一〇〇を出さない音楽家です。〇〇に入る言葉は??』
T
H
I
N
K
I
N
G
–
T
I
M
E
正解は【音(おと)】です。
1番面白いなと思うのは、音も出さない人が後から1人颯爽とステージの真ん中に向かい礼をし、演奏中はずっと背中を向けて、演奏が終わったら拍手を受けて1人だけ礼をするというところ。音出さないのに。
でも、それまでの計画やら練習やらの全ての責任を持ってステージに立っていると知ったら納得かな?と思います。
自分は演奏中、もしも誰か1人のケアレスミスが起きたとしても、演奏中の全て責任は自分にあると思ってやっていました。
それだけの覚悟と責任を引っ提げて、最後に受ける拍手は本当に気持ちがいいです!
指揮棒っているの?
第2問『指揮棒って必要?必要じゃない?』
T
H
I
N
K
I
N
G
–
T
I
M
E
正解は【時と場合、指揮者にもよる】です。
意地悪問題みたいになりましたが、本当にそうなのです。
ただ、一つ伝えることは、
「指揮棒は腕の延長だよ。」
ということです。
大勢の人を相手にする時に、後ろの人が見えにくくないように、腕の延長として指揮棒を持つと、私は認識しています。
とくにオーケストラなど、楽器で演奏する場合は、ステージが平面なので後ろの楽器ほど見えにくくなることもあるので指揮棒を持っているのかなと思います。
後は、指揮棒の先と指先で表現できる違いもあるのかなと考えますが、私は指揮棒は持たずに指揮をします。合唱ということもあると思いますが。
指揮者っているの?
第3問『指揮者って必要?必要じゃない?』
T
H
I
N
K
I
N
G
–
T
I
M
E
正解は【時と場合、人数にもよる】です。
またこれかと思うかもしれませんが、これもそう。
例えば
「1人でカラオケなどで歌うときに、指揮者っている?」
→いらない
「2人は?」
→いらない
「何人くらいから必要そう?」
→いろんな答えが出てくる
指揮者の仕事でもある、みんなの息をそろえるために必要であれば、指揮者はいたほうがいいと思います。
私の経験上、3〜十数名になると指揮者ではなくても何かしら合図を出す人が必要になると思います。
また、番外編として、ピアノを弾きながら指揮をする弾き振りも動画で少し紹介しました。
おわりに
指揮を振る機会なんて滅多にないことだと思いますが、指揮者になってみたいと思った方や、指揮をしなければならなくなった方へ、少しでも参考になればと思います。
おまけに。初めて管楽器の指揮をさせていただいた時の話を…
勤務先で音楽鑑賞会があり、管楽器5名の方々に来ていただきました。
みんなが聴き覚えのある曲が続く中、途中で指揮を体験しよう!のコーナーがありました。
事前に挑戦する子どもは決まっていましたが、やはり初めてには難しい。
曲はハンガリー舞曲第5番。速さの緩急や、音の大小もある曲で、聴き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
2拍子の振り方、指揮の大きさや速さを変えることで、音の大小や速さが変わることを練習した後、体験スタート!
1度聴いただけでは、なかなか変化をつけることも難しいなか、指揮を振り終えた姿は本当に立派でした。
1分ほどのショートバージョンでしたが、初めて指揮を振り続けるのは大変だったと思います。慣れてないと腕が本当にしんどい。(最悪、筋肉痛になる)
体験コーナーが終わりかと思いきや、
「せっかくなので先生の中からお一人…」
というような振りが…
せっかくの体験コーナーだから、合唱といえど経験者がやっても面白くないだろうと大人しくしていましたが、周りの後押しもあり参戦。
やるからにはスイッチオン。
我ながら見事な演奏(←)をやり終えて、大盛り上がりとなりました!
最後に、ここでの気づきを少し…
・演奏者はさすがプロ。演奏開始直後に少しテンポを上げようとした私が素人レベルではないことがわかるや否や、全員スイッチオン。指揮の変化に反応して、音楽が動き出し、管楽器を初めて指揮した私はとても気持ちのいい経験になりました。この場を借りて、本当にありがとうございました。
・私がなんとなくやりきってしまうと、とくに盛り上がることなく、拍手をもらって終わりだったと思いますが、私自身楽しくなったのもあり、ぴょんぴょん跳ねたり、大袈裟に指揮をしたりして、いわゆるパフォーマンス的なことをしたことで大盛り上がり。(普段の静な自分からの変化もいい要素になったなと…)
「全力でやり切らないとウケない」を改めて実感。
ちなみに、私的には指揮者は目立ってはいけないので、今回のような指揮は本当はアウト。
しかもチャレンジした子どもより目立って…
でも楽しんでもらえたなら、まあ良しとしようと、久々にエンターテイナーの血が騒いだ一コマでした。