消えるロボット

先日、研修で大阪工業大学へ行ってきました。

この日は半日研修。子どもたちは午前で帰り、午後からは各担当教科に分かれて研修に行きます。

場所は大宮キャンパス。大阪駅から市バス一本で行くことができ、意外と交通の便が良いです。

しかも、この日は生憎の雨だったのですが、バス停から徒歩5分の道はなんとほぼ高速道路の高架下。屋根代わりで傘をささずに辿り着くことができました。(※横雨には注意)

やはり初めての場所は緊張しますね。多くの学生とすれ違いながら、なんとか会場に到着しました。

松野文俊教授

研修内容は当大学の松野文俊教授の講演。そしてロボットの実演見学でした。


松 野 文 俊(まつの ふみとし) 1957.7.26生

京都大学 工学研究科 教授 工学博士

大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程修了後、同大学基礎工学部制御工学科助手、神戸大学工学部システム工学科講師、同大学同学部情報知能工学科助教授、東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻助教授、電気通信大学電気通信学研究科知能機械工学専攻教授を経て、現在に至る。

専門分野:知能ロボット,宇宙工学,制御工学,レスキュー学,分布定数システム,非ホロノミックシステム

http://www.mechatronics.me.kyoto-u.ac.jp/modules/member/index.php?content_id=2

今年2023年4月から研究室ごと当大学に移されました。

きっかけは…

元々は宇宙に憧れ、宇宙で活躍するロボットの研究をしていたそうですが、あることを機に目標が変わります。

それは阪神淡路大震災。当時神戸大学で働いていた時に、学生が震災の犠牲になりました。

その時、自分には何もできなかったと感じ、災害や事故現場で活躍できるレスキューロボットの研究に力を入れ始めたそうです。

人生いつ何が起こるのか。何が転機になるのか分からないものです…

「守破離」

「守破離」とは、日本の茶道や武道などにおける師弟関係のあり方の一つ。

守 まずは師匠の教えを守る。
破 習得できた型を破る。
離 型から離れ独自の新しいものを確立する。

これは何にでも当てはまるようで、松野教授の研究の軸となっている考えです。

身体性

鉄棒の蹴上がりのアクロバットロボットを創った時の話です。

ロボット自らが学習しながら習得した蹴上がりの映像。一見、なんの違和感もなかったが、人間の動きと比べると、一つ余分な動作があることに気づきました。

これは、ロボットのモーターなどの構造の都合上、人に比べると非力であったことから生まれたと考えられました。

ロボットが人間の動きから学び習得した動きから、自分に合わせた新しい動きを見つけ出した瞬間。まさに「守破離」をロボット自らが行なったことに驚きました。

逆に言うと、運動の苦手な人からすると、運動の得意な人の真似をしていてもできないことはあるだろうが、得意な人の型を参考に自分なりの新しい型をみつけ、できるようになるのではないだろうか。

野球の投手でも色んな投げ方があるのは、まさにこれのようにも思えた。(変則ピッチャーは活躍の場が増えてるような気がする。)

何事にも、その人に合ったやり方があるのだと再確認できました。

生物から学び 生物を超える

ロボットの師匠にあたるのは人だけではありません。虫や魚、様々な動物から動きを真似して学び、それを破った先にある独自の動きを創り出します。

今回は、実演でも見せていただいた

  • アリ
  • ヘビ

の2つを紹介しようと思います。

アリから学ぶ 守

まずはエサの協調運搬を見せていただきました。

アリは声をかけたり動きで伝えたり、コミュニケーションを取れるような生物ではありません。

アリはエサをみつけると、フェロモンを出して仲間に伝えます。

これをロボットに置き換えたものが、このようなものでした。


まず、低い円柱に近いロボットが、ランダムにフィールドを動き回ります。

運良くエサである目標物をみつけると、巣へ向かって押して運ぼうとします。

しかし、一つのロボットだけでは重たくて運ぶことができません。

そこで、フェロモンの代わりとなるアルコールを地面に散布しながら巣へと戻って、またエサに向かいます。

すると、そのアルコールを感知した他のロボットたちもアルコールをたどり、エサである目標物へ向かっていきます。

そして、巣へと押し運ぼうとするロボットが次第に集まり、思いエサを巣へと運ぶことができました。


ここで面白いなと思ったのは、複数あるロボットのどれも協力して運ぼうという気がなかったことです。

ただ、エサかフェロモンを道標に動き回っているだけなのです。本能とでも言えるのではないでしょうか。

小3国語の「ありの行列」をふと思い出しました…

アリを超える 破(離)

講演では先ほどの次にお話されてたので、アリからの派生系だと思われるのが次のロボット。

リーダーによるフォロワー群の誘導制御系

と呼ばれるもの。

さっきと同じような複数のロボットで、指示されているのは、近くのロボットと程よく距離をとるというもの。

そして、その中にリーダーにあたるロボットが隠されていて(他のロボットたちは、どれがリーダーか知らない)、リーダーだけが進むべき道を知っているというもの。

動かしてみると、あら不思議…

いつの間にか、自然とリーダーを先頭に隊列を組んで進んでいきます。

こんな単純な指示で、引っ張っていくリーダーがわからなくても、統率がとれたかのように動くことに驚きました。

このロボットたちが、今後どのように進化を遂げていくか、また、師匠として新たなロボットが生み出されていくのか、気になります。

ヘビから学ぶ 守

お次はヘビ型のロボット。

構造は、二つのパーツがモーターによって腕の関節のように折れ曲がるというシンプルなもの。それが36個の関節で組み合わされてできています。

まず見せていただいたのは、side windingというウミヘビの動きを模した移動方でした。

簡単に言うと、うねりながら前ではなく、横に移動する動きです。

ここで一つ面白いと思ったのは、操作はゲーム機のコントローラーを使っていたことです。PS4のやつ!

ボタンの数や、操作のしやすさで選ばれたようです。ゲーム好きには興味を唆られる光景でした。

後述のヘビ型ロボットはすべて、(プログラムを変えながら)このコントローラーで動かしています。

ヘビを超える 破

他にも様々な動きを見せていただきました。

・棒状になり、ゴロゴロ転がる動き

・キャタピラのように、自らで円を作り転がっていく動き

そして…

ヘビを超える 離

ハシゴを登りました。ヘビが。

ただ登るだけだと、ヘビなら難なくできそうな動きですが、驚いたのは、ハシゴに身体を巻き付けているようで巻きつけていなかったことです。

そのおかげで、後ろに繋がっているコードが絡まることもなく、登っている途中のロボットがスッと上に持ち上げるだけでハシゴから外れました。

ただ、この操作だけはかなり技術がいるらしく、その研究室で動かすことができるのは限られた人のようです。

技術と技術の融合。すごい。

生物を超える

たくさん紹介しましたが、最後に。

ロボットの実演はなく、講演の中だけの話だったのですが、私が1番衝撃を受けたロボットを紹介します。

それが、

「奇数本足のロボット」

です。

話の中では、「モジュラー脚型ロボット」として紹介されていました。

創り出したきっかけが、

0.2.4.6.8…と偶数の本数の足をもつ生物はいるが、1.3.5…と奇数の本数の足をもつ生物はいない。創ろう。

というような発想。

常識の中だけでとらわれてしまいがちな私にとっては、まさに目から鱗でした。

しかも、あろうことか、その1本足、3本足のロボットをモジュールとして複数個組み合わせて動かすということもされていました。

もはやこんな生物、存在しないですよね。

まさに生物を超えた研究をされているんだなと感じました。

消えるロボットとは

こうした研究を重ね、組み合わせ、災害時に活躍できるロボットを創り出していっている松野教授。最後に、このような感じのお話をされていました。


車はロボットですか?

電車は?

ヘリコプターは?

では、ルンバは??

自立して動くものがロボット。そんなロボットも、今では生活の一部として溶け込み、「ロボット」という名を冠さないものまで出てきました。

生活や、社会に溶け込んで活躍するロボットを生み出していきたいです。


ロボットがロボットと言われなくなり、「ロボット」という言葉が自然と消えていく未来もそう遠くないのかもしれません。

まとめ

最後は教員らしく、この研修をどう生かしていくのか。

  • 子どもたちを型にはめ込みすぎず、子どもにしかだせない柔軟な発想を大切にする。
  • 将来の素地となる義務教育。基礎的な知識、技能をしっかり指導し、可能性を広げる。
  • 「守破離」をもとに、自分に合った自分だけのスタイルを確立していく。

以上。

長文、読んでいただきありがとうございました。

真面目なエンターテイナー 今井脩

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